学会情報

日本中国学会第64回大会(2012年10月6日〜7日、大阪市立大學杉本キャンパス)にて、当会の大野裕司氏が「陳元靚『上官拜命玉暦』について―宋代術數學(擇日術)の特色を探る」と題し研究発表を行います。司会は京大人文研共同研究班「術数学—中国の科学と占術」班長の武田時昌先生です。ここでは参考のため大野氏発表の要旨と大会発表の一覧を転載させていただきます。詳しくは下記公式サイトをご覧ください。
http://nippon-chugoku-gakkai.org/utf8/taikai/64taikai.html

発表要旨
「陳元靚『上官拜命玉暦』について―宋代術數學(擇日術)の特色を探る」
 唐宋變革論の是非はともかく、宋代に文化的大變化があったことは確かであろう。術數學においてもそれは例外ではない。變化の要因の一つとしてその擔い手の變化が擧げられる。廖咸惠・劉蘒光兩氏によって、宋代士大夫(儒者)と術士の密接な交流の實態が解明されている。かかる交流の下、儒者による術數研究が盛んとなり、術數書の編纂・注釋・執筆を行う儒者も出現した。
 陳元靚『上官拜命玉暦』も儒者による術數書といえる。該書は北京大學圖書館藏明抄本『上官拜命玉暦大全』が現存する。本發表は該書の調査に基づく。
 從來、陳元靚は日用類書の鼻祖『事林廣記』の編者として着目された(酒井忠夫・宮紀子・金文京氏ら)。發表者は、陳元靚は術數學史上においても重要な人物であったと考える。
 該書は趙師俠『拜命暦』(『居家必用』所收)を基礎に、種々の術數書を參照してこれを大幅に修正増補した擇日書である。『拜命暦』は全五二篇、一方、『上官拜命玉暦』は全一二九篇、篇數だけ見ても兩者の違いは如實である。
 該書は『通志』の分類で五行・登壇の類に屬する。その内容は官吏の生活に關する擇日の專著である。この類の書籍は『隋書』經籍志以降登場しており、科擧の開始により科擧官僚の需要に應じて出現したものであろう。
 元靚自身は科擧に及第していないが、陳氏は朱子一族と交流が深い家柄であったらしく、その書中には儒教的特色を見ることができる。本發表では、先行研究で既に指摘されている宋代術數學における儒教の影響を、該書に基づいて具體的に示すことを目的としたい。
 しかしながら、該書は明抄本しか現存していない。そこで『拜命暦』および陳元靚のもう一つの術數編著『差穀奇書』との比較を通じて宋代以降の増補の有無を確認する。また現存する同時代擇日書(『寶祐四年會天暦』『三暦撮要』『彈冠必用』)や後世の擇日書との比較を通じて陳元靚の術數學史上の貢獻を明らかにしたい。

日本中國學會第64回大會2012年10月6日〜7日
大阪市立大學杉本キャンパス
研究發表
哲學思想部會
高田哲太郎「呂氏春秋の天―統一理念の前提―」
工藤卓司「『史記』『淮南子』中の豫讓復讐物語」
影山輝國「皇侃と科段説」
福谷彬「宋學における「思孟學派」觀の成立について」
青木洋司「呉棫の『尚書』解釋―『書裨傳』を中心として―」
大野裕司「陳元靚『上官拜命玉暦』について―宋代術數學(擇日術)の特色を探る―」
三澤三知夫「王畿の經書解釋について―『大象義述』を中心として―」
井澤耕一「南宋末、士大夫たちは「四書」を如何に讀み解いたのか―上海圖書館藏『金匱要略方』の紙背文獻に關する一考察―」
田中有紀「何瑭の形神二元論」
王晶溝口雄三の知的實踐―「日中・知の共同體」を通じて―」
文學語學部會
恩塚貴子「漢末魏初に於ける書牘體の變化―その内容と文體を中心に―」
戸高留美子「「魏都賦」における西晉王朝の正當性立證の過程について」
竹澤英輝「『文心雕龍』における劉勰の「神」の概念について」
谷口匡「柳宗元の「説」について」
長谷川眞史「中唐における連昌宮の荒廢と元稹」
二宮美那子「園林の「小空間」―白居易詩文における私的空間の位置づけについて―」
谷口高志「愛好という病―中晩唐期における詩人たちの偏愛・偏好への志向」
林雪雲「蘇軾の妻妾に對する觀念」
福田知可志「再婚をめぐる怪異譚―『夷堅志』「張夫人」の物語を中心に―」
李海「梁啓超の詩論と紱富蘇峰」
平田昌司京都市左京區における茅盾」
吉川龍生「映畫『武訓傳』と孫瑜映畫のファンタジー
田中祐輔「中國の大學專攻日本語教科書の現代史―日本語教科書が包攝する「國語教育」に付與された教育思想的役割―」
日本漢文部會
横山俊一郎「江戸時代後期における〈實務家〉としての儒者―瀬戸内諸藩における懷紱堂學術の受容を中心として」
矢羽野隆男「幕末懷紱堂の陵墓調査―最後の教授・竝河寒泉の活動」
COE成果報告
佐藤進「21世紀COEプログラム「日本漢文學研究の世界的據點の構築」とその繼續事業」
吾妻重二「グローバルCOEプログラム「東アジア文化交渉學の教育研究據點形成」(ICIS)の成果と展望」
展示紹介
齋藤龍一「大阪市立美術館山口コレクション中國佛教・道教彫刻について」
特別講演
王水照「宋代文學研究中的學理性建構―以文學與科學、家族、傳播、地域、黨爭之關係爲中心」